--. --. --  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2014. 12. 10  
当日のプログラム

       運気論と病症の一考察
           大阪 利川鉄漢
【緒言】
運気とは五運六気の略で、自然界の天候や気候の変化、それに人体と発病、治療法や予防などの関係を研究する学説である。運気論に関する初期の文献は、七六二年に王冰が『素問』を再編・注釈する際、すでに欠けていた巻を他の書から補入した運気七篇の天元紀大論、五常政大論、五運行大論、六微旨大論、至真要大論、六元正紀大論、気交変大論である。その主たる内容は、五行の五運(春・夏・夏土用・秋・冬)と三陰三陽である六気(風・熱・暑・湿・燥・寒)を用い、主運・主気という各季節による正常な気候と、客運・客気の毎年変化する気候の組み合わせによって現れる気象状態・病症・治療法(主に湯液処方)が詳細に解説するというものである。運気論ではとりわけ六気による気候の変動が重要である。五運による天干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)の組み合わせによる五運化で、各年の大過不及と客運が導き出される。これにより大まかな年毎の特徴と季節の到来が早いか遅いかを推測できる。六気では、地支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)による正化、対化の組み合わせの変化で、各時季の変動する気候が客気によって導き出される。さらに運気の主客を陰陽五行論により割り出され、五運と十二支の組み合わせが六十となり、ここに六十年周期の運気が導き出される。
その運気論を病因病機による運用として、『素問』や『霊枢』などでは九宮八風論で論理が展開されている箇所がある。また金元時代においては、難経の四十九難・五十難の五邪論で論理の展開がされている医書が多数見かけられる。

〈九宮八風の運気論*1〉
九宮八風は、宇宙天体を平面の大地を上から見るアングル(古い蓋天説)に基づき、「土」を中心とした五行論により展開し、北斗星(北極星)と北斗七星の斗柄が示す八方向から、四季の節気の推移と、八方向から吹く風により生じる気候の変化と人身に対する影響を推測する。なお 季節の特徴を「風」という言葉で表し、寒熱燥湿という表現は見られない。この「風」は、正風(実風)と虚風に分けられ、虚風に中れば症状は悪化するという。
また「六元正紀大論 第七十一」の後半部分では五運のめぐりによって、六気が九宮に災いをもたらすことが予測についても記述されている。*2


*1:最近の研究では、山田慶児の論(「九宮八風説と「風」の病因論」、『中国医学の起源』第六章、283~323頁、岩波書店、1999年)をはじめ、『霊枢』九宮八風に見える正風(季節にふさわしい方角から吹く風)と虚風(正風の逆の方角から吹く風で季節にふさわしくない風)の病因論などの気象医学を、運気論の初期的な理論として捉える石田秀美の論は大変興味深い(「気象医学と九宮八風説」、『中国医学思想史』143~145頁、東京大学出版社1992年)。これらは運気七篇の「六元正紀大論」の後半の部分や『霊枢』「九宮八風篇 第七十七」「歳露篇 第七十九」に詳細が記述されている。(中国医学思想史、石田秀美、東京大学出版社、1992年)これらは、運気七篇中の六元正紀大論後半や『霊枢』九宮八風、歳露篇に詳細に記されている。

*2「五運氣行主歳之紀.其有常數乎.岐伯曰.臣請次之.甲子.甲午歳.上少陰火.中太宮土運.下陽明金.熱化二.雨化五.燥化四.所謂正化日也.其化上鹹寒.中苦熱.下酸熱.所謂藥食宜也.乙丑.乙未歳.上太陰土.中少商金運.下太陽水.熱化寒化勝復同.所謂邪氣化日也.災七宮.濕化五.清化四.寒化六.所謂正化日也.其化上苦熱.中酸和.下甘熱.所謂藥食宜也.…」


〈難経四十九難・五十難の五邪論による運気論〉
難経では、五気を病邪として五邪(風・熱・飲食労倦・寒・湿)とし、「土」を五行のサイクルに入れての、五臓と季節の旺気時によって、正経が自ら病む場合と、五邪によって犯されて病む場合とに区別されている。それらは各五邪の伝変と病症をと脈象と五役によって論理が展開されている。これは積聚論とも関係する。


【目的と方法】
以上のように、当初は九宮八風を源流として始まった運気論は、金元時代になると九宮八風ではなく『難経』五十難による論理が展開されるようになった。このことから、原初的な九宮八風を土台として運気論、さらに九宮八風と『難経』五十難の論理を比較検討する。


【結果と考察】
①六元正紀大論の後半は、六気というよりも五運を主として論じられていると見られ、方位(東西南北)と四季と五臓と関連要素が強い。五運による気候の変動をみるうえでは有用と思われる。
②当初は「土」を中心とした五行論による九宮八風と三陰三陽によって展開されてきた運気論の運用は、金元時代になると九宮八風ではなく、「土」を五行のサイクルに組み込んだ『難経』四十九難・五十難をベースにより論が展開されるようになった。
③その嚆矢となるのは、運気七篇中の至真要大論の病機十九条を基本病機として展開した劉完素の『素問玄機原病式』であろう。
④張子和の『儒門事親』の六元正紀大論が多く引用されの、六気の各気数(初・二・三・四・五・終之気)と時気、二十四節気と経気の配当されている。特に李東垣の『医学発明』の五邪相干(『難経』四十九難・五十難と『傷寒論』に拠る)や王好古の『此事難知』では、季節(節気)ごとの病因とそれらの病症に湯液・鍼灸処方を挙げ、季節循環における病機病症解釈の整理をおこなっている箇所が多数記載される。そこには九宮八風論における運気解釈は展開されていない。これには病因論の解釈が金元では整理されてきたことと、六気による気候の変動が運気論では重要であることが深く関係している。具体的には六淫は「風・寒・湿・暑(熱)・燥」とされている。後代には飲食労倦(『難経』)を外感因し、「湿」は「湿熱」と「冷湿」が区分され、「燥」では「温燥」と「涼燥」に区分される。これらは五行に分類配当されている。
 風(木)、寒(水)ただし『難経』では上から身体を犯して主として肺を傷める性質の病邪として把握するので(金)に配当、湿(土)も『難経』では下方から身体を犯して主に腎を傷る邪と把握しているので(水)に配当する。そして「飲食労倦」を「土」に配当し、「温病」論では「長夏の気」と把握するが「湿熱」と「冷湿」に区分している)、暑・熱はともに火に配当されている。
⑤九宮八風と『難経』四十九難・五十難をそれぞれ土台とする運気論は、後の『子午流注鍼経』『鍼経指南』の中枢理論として、運気論とともに夫婦配合に「難経」の剛柔論と五行穴に、流注八法においては九宮八風における五臓の生数(1,2,3,4、5)と成数(6,7,8,9)の太過不及論において八総穴の運用に応用されていくことになる。

【結論】
九宮八風は主に五運を主体とした気候の変化と循環を意味しているのに対し、『難経』五邪論では主に六気を主体とした気候の変化と循環を意味している。運用に際しては、運気論では主運と主気を結びつけて判断するため、主に六気の変化と作用が重要になる。そのため、六気が病因となる六淫と、臓腑と三陰三陽が系統的に結びつけられてきた金元時代の方が、より臨床的といえる。さらに複雑な運気論の解釈を比較的にわかりやすく解釈しているため、現在、運用可能なものとなっているのである。

【使用版本】
①明・顧従徳本『重広補注黄帝内経素問』日本経絡学会1992年
②明・明刊無名氏本『新刊黄帝内経霊枢』日本経絡学会1992年
③『難経集注』(濯纓本)日本内経医学会1997年
④張元素『薬註難経』『難経稀書集成』第一輯所収 オリエント出版社1997年
⑤熊宗立『新刊勿聴子俗解八十一難経』『難経古注集成』オリエント出版社1982年
⑥谷野一栢『新刊勿聴子俗解八十一難経』(天文刊越前本)『難経稀書集成』オリエント出版社 1997年
⑦張子和『儒門事親』『和漢漢籍医書集成』第二輯所収 エンタープライズ社1988年
⑧王好古『此事難知』『和漢漢籍医書集成』第六輯所収 エンタープライズ社1988年
⑨王好古『湯液本草』『和漢漢籍医書集成』第六輯所収 エンタープライズ社1988年
⑩李東垣『医学発明』四庫全書
⑪清・柳宝詒『温熱逢源』人民衛生出版社1984年
スポンサーサイト
NEXT Entry
 『黄帝内経』における季節に関連する篇について
NEW Topics
12月例会報告
12月例会のご案内
11月 合宿報告
10月例会報告
11月は例会は合宿になります。
10月例会のご案内
9月例会報告
9月例会のご案内
8月例会報告
体表に現れる情報の多層性
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

関西漢法苞徳之会

Author:関西漢法苞徳之会
『素問』『霊枢』『難経』に基づき、『傷寒論』『温病学』『現代中医学』をも学び
また日本の漢法鍼灸医学を継承した
<基礎の確かな>
<医の心のシッカリした>
鍼灸臨床家を目指した研修を図るものである。

最新コメント
検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。